理事長からの言葉

一般社団法人 日本ブラインドテイスティング協会
代表理事 鈴木明人
サイエンスラボ代表
「WINEブラインドテイスティングの教科書(グラフィック社)」著者
日本ソムリエ協会 ワインエキスパートエクセレンス
薬剤師
2025年10月、私たちはブラインドテイスティングの魅力を社会に広く届けるため、当協会を設立しました。銘柄やラベルといった外部情報をいったん取り払い、外観・香り・味わい・質感そのものに向き合う体験は、知識と感性を結び直し、「五感で世界を鮮やかにする」学びへとつながります。講習会・コンテスト・認定制度という三位一体の仕組みにより、文化の普及と人材育成、そして酒類飲料産業の発展に貢献してまいります。
ブラインドテイスティングはクイズではありません。ひらめき、記憶、推論、言語化を同時に働かせることで、「感じる力」を磨く科学的かつ教育的な手法です。嗅覚や味覚を中心とした感覚はトレーニングによって高まり、ワイン以外の香りや味の識別力にも広がることが研究によって示されています。私たちは、この「感じる力」を科学的な視点から可視化し、だれもが再現可能な学びとして提供していきます。五感が研ぎ澄まされるほどに、ワインはもちろんのこと、食や芸術、日常の風景さえもより鮮やかに感じられるようになるはずです。この体験を、年齢や経験の有無を問わず、多くの人が享受できる形で広めていきます。
今後は、全国どこにいても等しく学べる環境づくりを進めます。オンラインと対面の講習により、正しい方法論とマナーを体系的に伝え、毎月のコンテストで実力を適正に評価し、上位認定者には講師権を付与して学びの輪を広げます。生産者の皆さまとは、世界のワインとの比較を通じて自社ワインの位置づけを言語化し、わかりやすい情報発信を支援します。Z世代を中心に動画やSNSからワインに関心を持ち始める人が増えている今こそ、新しい文化の担い手を育む環境づくりが重要であり、ブラインドテイスティングがその入口になり得ると考えています。将来的には、様々な飲料分野への展開も視野に入れています。
AIが高度化する時代においても、自分で「感じ、考え、伝える」力は代替されません。ブラインドテイスティングは、共感力や表現力を育てるとともに、日常を深く味わう力を引き出します。私たちは、この学びを通じて感性の豊かな社会を育み、五感を軸とした新しい文化の創造をめざします。今後とも当協会の活動にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。